家の資産価値を大義名分に建物価格を正当化するのがもやもやする理由

    ローコストな家づくり

    前回の家の資産価値って誰のため?の続きです。

    本当は、こっちの話しを先に書いていたのですが、前回の前フリが長くなりすぎて先送りになってしまいました。

    以前、「将来売るつもりなら建売よりちょっと良いぐらいがいいと思う理由」とか、「坪単価80万以下の予算なんかじゃ建てない方が良いという死刑宣告」などの記事でも書いた通り、わが家のようなローコスト住宅ではなく、もっと予算をかけて将来資産価値のある家を建てるべきという専門家の意見があることを紹介しました。

    わが家の場合、約1,000万円以上建物価格に予算を上乗せしておけば、将来資産価値の高い家になっていたという説なのですが・・・・

    でもね。やっぱりそうなのかなぁ?と疑問に思うんです。

    このあたり、ちょっと裏付けになりそうな情報のご紹介と、実体験に基づくもやもやする理由を考えてみました。

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    高い代わりに将来資産価値が残るよって本当ですか?@Gerd AltmannによるPixabayからの画像

    なんと建売よりも注文住宅のほうが建物価格の下落率が早い

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    木造住宅の建物価値は築20年でほとんどなくなるという話しはとても有名だと思います。だからこそ、建物にきちんと費用をかけて長持ちする資産価値の高い家を建てましょうと展開される意見も良く見かけます。

    でも、これこそが一番モヤモヤする意見だったのですが、運良く私の実感に近い情報を公開している記事がありました。

    まず、このグラフをご覧ください。
    木造住宅の下落率2
    [引用: DIAMOND online 「戸建ての建物価値はわずか20年でゼロになる」は本当か?]

    左側は、分譲戸建ての築年別建物の平均下落率なのですが、建物価値がほぼゼロになるのは約32年目です。
    建物価値がゼロになると言われる築20年目では、まだ40%近く残っているので意外ですね。

    一方で、注文住宅は10年目で価値は半額以下となり、22年目でほぼ9割減となることを表していまます。
    しかも、このグラフのポイントは、木造住宅に限定しておらず、重量鉄骨などの耐用年数が34年にも及ぶ注文住宅も含んでいることです。

    この結果を見ると、丈夫で長持ちする家が建物の価値を維持(=資産価値がある)するように考えることに疑問を感じないでしょうか?
    注文住宅の価値が下がりやすい原因として「オーダーメイドはその家族用につくられた家であって、他人が気に入るとは限らないということなのだろう」と書かれているのですが、以前私が、「いかに平均的な間取や仕様になっているかどうかが重要」「年間何万棟も売れている建売住宅は、売れるための最大公約数的な間取間取としてとても合理的」書いたことと繋がりますね。

    分譲戸建の場合は、やはり圧倒的に木造が多いと思いますが、住宅の仕様や施工について酷評されがちな建売住宅のほうが価値が長持ちする結果というのは、皮肉というか興味深い結果です。

    ただし、元記事の文章を見ると分譲戸建ての場合はベストケースで、注文戸建はワーストケースと考えるべきと補足があるのでご注意ください。

    とはいえ、どちらも木造の耐用年数の22年を経過すると資産価値がゼロというのは、分譲・注文に関わらず、ほぼ当たっているとあるので、家にお金をかければ資産価値が残ると過度な期待をかけるのは危険ではないかと思うのです。

    むしろ、分譲住宅のコスパが際立つ印象ですね。
    注文住宅の場合、一回り分譲住宅よりも平均的に広いことも書かれていますが、広さに応じて総額が高くなるのも価格ダウン圧力につながっている気もします。

    このメカニズムを考慮すると、建売を参考にした汎用性の高い間取りでほどほどの広さの家を建てるのが戦略的でお得なのかなぁとか思いますが、それだと折角の注文住宅がつまらなくなってしまいますよね。

    資産価値なんて、大義名分で正当化せずに、あくまで自己満足として許容できるそれぞれの予算の範囲で注文住宅を楽しめば良いと思うのですが、どうでしょう?

    実家を売るつもりも住み替えるつもりもない父の気持ち

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    前回、「自宅っていつ売るの?誰が売るの?」という疑問を書いたのですが、これは親の実家の扱いを見ていて感じたことから来ています。

    私が愛用しているMoneyFowardの未来の資産シミュレーターでは、平均寿命が85歳で試算されるのですが、昭和10年生まれの父親がまさに今年その年令なんですよね。
    幸い両親共に健在なのですが、階段の傾斜のきついバリアフリーと真逆の三階建の戸建てで今だに生活しています。

    実家近くに住む弟が、家を売って何度かマンションかアパートに住み替えては?と勧めてみたそうですが、まったく父は耳を貸さなかったようです。

    元々、基本的に頑固で口数の少ない父なので、

    • 思い入れのある自分の城を手放したくないのか
    • 自分の家に値段を付けてもらいたくないのか
    • 今更住環境が変わることに抵抗があるのか
    • 実は何も考えていないのか

    本当のところは、全くわかりませんが、息子に家を売ったらと言われても
    いやだと思う、その気持ち、なんとなくわかるなぁと思うんですよね。

    庭もない狭小三階建住宅ですが、長屋暮らしから新築の実家に引っ越した時の誇らしげな父の様子は、今でも記憶に残っています。ちなみに、逆算すると父親が49歳(今の私の歳!)で実家を購入したことにも今更気づいたのですが、いやぁよく頑張ったなぁと思います。

    それだけに、私が2階建ての庭付き一戸建ての家を建てたことを、とても喜んでくれましたし、私もとても贅沢だと感謝しています。ローコスト住宅だから・・・安くてダメな家とか全く感じないんですよね。

    まぁ、どうせ狭小三階建なので、売っても価値がないからでしょ?
    という意見もありそうですが、実は高く売れる機会もあったんです。

    購入時の4倍以上の価格で売るチャンスがあった

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    確かに築36年となる実家の建物価値はまずありませんし、狭小三階建なので、土地の価値もかなり厳しい条件でしょう。

    でも実は、購入時の4倍の価格で売ってくれと言われたことがあるんですよね。
    まだバブルの頃だったのですが、南向きで日当たり条件なども良かったことも重なり価値が高騰したそうです。
    その当時、私も含む兄弟の教育費の工面で苦労していた頃なので、とても悩んだ挙げ句、やっぱり売らなかったことを名残惜しそうに話をしてくれたことが印象に残っています。

    もし売って賃貸に一旦住み替えていたら、ローンを精算した上に数千万を手に出来ていたので、ものすごい利回りだったんですけどね(笑)
    株式投資でも不動産投資でも買うより売るのが難しいと言われるとおり、あくまでタラレバですね。

    この話で痛感したのは、

    • 資産価値があっても適切なタイミングで家を売るのは難しい
    • お金に困っていても家の一部を現金化して利用できない
    • 家にお金をかけるバランスを間違えると後で簡単に訂正できない

    ということです。

    このような経験から、資産形成を自宅に偏って頼る考え方は共感できないんですよね。

    家だけに頼る資産形成では結局家は遺らないかもしれない

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    そういえば昔、母に「この家は、(長男の)あなたがちゃんと守ってね」みたいなことを言われた記憶があります。

    将来、一緒に住んでほしいという願いも込められていたと思うので、地元を離れて家を建ててしまったのは親不孝だなぁと胸が痛みます。昔の人なので、金銭的な価値だけでなく、「家」という形を引き継いでいくことの意味を大切にしていたのだと思いますが、最近でも何代も住み継いでもらうためにいい家を立てようというニュアンスで、家にお金をかけることの意義を説明している場面を見かけます。

    しかし、私の場合、自分の建てた家を住み継いでもらいたいとは、全く思わないんですよね。
    私と妻の生活のためには、しっかり役割を全うしてくれれば、それで十分です。
    こんなことを言うと、「また、そうやってゴミみたいな家を建てやがって」とか言われるんですかね。

    もちろん、子供がどうしても住みたいと言ってくれれば、好きにしてもらおうと思います。

    ところで、「もめる相続」は資産5000万円以下が最も多いそうです。

    特に、相続遺産が不動産だけの場合は、よりややこしいようです。
    他に金融資産があれば、誰かが家を引き継いで金銭で分けることも出来ますが、結局親の家を売却してお金で分けることも多いようです。
    まぁ、それでも家に価値があれば、子どもたちに金銭で遺産を残せるでしょということかもしれませんが…

    でも、お金を残すための資産形成であれば、家だけに資産が集中するのはあまり良くないと思います。

    投資の有名な格言でも「すべての卵を一つのカゴに盛るな」という言葉があるぐらいなので、家以外にも金融資産として遺す余力を考慮して、家に投資するのが良いのではないでしょうか。

    代々住み継いでもらうような提案されておられる住宅の価格を見ていると、わが家の家計だと家に一点集中でもアップアップなぐらいなのですが、購入される方々って皆さんその上で、他にも金融資産を残せる余力があるのなら、それはすごいなぁと関心します。

    ただ、やっぱり、その中にも家に惚れ込みすぎて、うっかり家に資金を集中投下しちゃうご家庭もあるんじゃないですかね。

    ローコスト住宅って、日本の景気や平均年収とか見ていると自然な社会の要求だと思うのですが・・・

    そんなに予算がないなら、そもそも(ローコストな)家は買わないほうが良いなんてプロの意見も見たことがありましたが、どう「良い」のか理解できませんでした。

    家づくりって、一握りの高収入な方々のためだけの特権なんでしょうか?

    わが家にとってはローコスト住宅のおかげで、家に頼らず、むしろ高い資産運用のパフォーマンスと流動性を確保出来ているので、ローコスト住宅を建てなければ良かったなんてことは、全くありません。

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