我が家の家づくりの初期に出会った100年ホーム(仮称)というローコスト系のハウスメーカーがあります。(社名はブログ中で明かしてあるのですが、あえて仮称で…)
当時の振り返りも兼ねて、この会社のホームページを久しぶりに見てみたところ、会社も健在(失礼)で、住宅の仕様も結構グレードアップしているようでした。
パチンコ屋のようなド派手なチラシのデザインは未だ健在のようですが(笑)
[39坪で800万円って、またすごいこと書いてますし(泡)]
この会社は、どちらかというと、住宅の構造よりも豪華な住設を前に出した営業スタイルのイメージでした。
本当に、何も知らない頃に訪問したので、断熱や耐震に関する住宅の知識がないままに訪問したので、そのド派手なチラシでのアピールに、まんまと飲み込まれそうになりかけていました。
一応、長期優良住宅に対応とは説明を受けていたので、断熱性や耐震性も高い性能を備えているようでしたが、他のハウスメーカーにあったような具体的な構造の説明や展示はありませんでした。
この会社は、断熱材がグラスウール、構造用パネルを使用しない筋交いのみの工法が標準なのですが、他のビルダーを色々まわって目が肥えた後、この会社は構造面に力を入れてないんだなと感じた記憶があります。
限定キャンペーンの特典を理由にすぐの契約を勧められましたが、施主が知恵を付けるまえに短期決戦で決めさせる作戦だったんですかね。
しかし、昨今の断熱性や耐震性などの住宅の基本性能への意識の高まりを受けてか、この会社も以前と芸風が少し変わっているようです。以前は、印象のなかった断熱や耐震に関するアピールをしっかりしているではないですか。
今回は、このローコスト住宅の進化を、ちょっと調べて見たお話です。
ローコスト住宅の断熱のイメージ
本来グラスウールは住宅の断熱材としては、とてもコストパフォーマンスがよく合理的な選択肢のはずなのですが、施工ばらつきリスクからどうしても他の断熱材に目が行ってしまいます。
実は、高性能グラスウールの性能は、他の断熱材と遜色がなかったり、高級住宅でも使われていたりするんですが、どうしても建売やローコスト住宅の標準仕様のイメージが拭えませんでした。なので、セルロースファイバーに手が届かない我が家が、壁断熱にアクアフォームを採用したのは、予算がない中でかなり背伸びして贅沢した感じがします。
満足度も高いのですが、ある意味自己満足の世界かも?
一方で、予算の都合上、天井断熱は高性能グラスウールにしたので、なんだか、正直若干悔しい気持ちはあります。ハイ。
でも最近は、ローコスト系ハウスメーカーや工務店でも現場発泡ウレタンの断熱材を採用しているところもよく見かけるので、以前より普及価格になって来たのかもしれません。
しかし、100年ホームでは、それとは違うアプローチでグラスウール断熱材を置き換える工法を採用していました。
ただ、この工法は、単に断熱材を置き換えるだけではない、様々な意味があるようです。
断熱材があらかじめ一体化したコーチパネル
100年ホームが採用している従来のグラスウールを置き換えた工法というのが、このコーチパネルというものです。
こちらは、特に100年ホームの独自の工法ではなく、静岡のコーチ株式会社の商品で、テレビでも紹介されたそうなので有名なのかも。
検索すると、様々な工務店ですでに採用されているようです。
この商品は、工場加工であらかじめ木枠材の中に断熱材をはめ込んで一体型されたパネルです。
枠部分は、断熱材の寸法に合わせて切り欠きがあり、そこにはめ込むようになっているので断熱材がぐらつかないようで、仕事が細かいですね。これも、工場加工だからこそ出せる精密な加工なのでしょうか。
これを、構造の柱の間にスポッとはめ込む施工方法となります。
これだけを見ても、最初は「ふーんそれで?」という感じだったんですが・・・
なんと上棟日に取り付けられてしまう上、構造用合板も筋交い金具も不要?
こちらは、コーチパネルの公式ページに掲載されている施工風景です。
このように、あらかじめ工場で加工されたパネルを柱の間にはめ込むだけなのだとか。なんだか、素人でも自ら出来そうな気がしますね(笑)。ただし、あらかじめ発注した寸法と実際のはめ込む場所の寸法を寸分狂わせずに施工しておくのがかなり大変な気がしますが。あと、この写真にも見える、屋根の勾配にそった斜めになっている部分がどうするのかが気になります。
ただ、これを見てやっと気がついたんですが、このはめ込む作業で、筋交いを付ける作業と構造用合板を貼る作業と断熱材の施工が一度に終わってしまうということなんですよね。
我が家の場合、このようにW筋交い(たすきがけ)の耐力壁をたくさん入れていただいていますが、大工さんが施工の手間がとてもかかるとおっしゃっていました。筋交いが多いと金具も多くなるとぼやいていたような・・・
さらに、W筋交いの場合、くさび状の複雑な空間の中に断熱材を隙間なく詰め込む高度な施工が必要です。アコルデ自慢のセルロースファイバーや我が家が採用したアクアフォームのように吹き込みや吹付け施工であれば問題ないのですが、グラスウールの場合はかなり大変で施工精度も心配ですね。
しかし、この写真のような取り付け作業だけで、この煩わしい筋交いの金具施工と精度が求められる断熱材の施工、さらに製品によっては釘打ち精度が問題になる構造用合板の施工を気にしなくて良くなると言うことなんですよね。
さらに、驚くことにこの取付作業は上棟日に可能らしいのです。
地震に強い コーチパネル 検討中!! | 女性設計士が考えるしあわせの家づくり
こんにちは 野口です。 10月に入り 今年も残り 3ヶ月ですね。 うーん早いものです。 以前から 弊社で検討し…
この工期短縮効果は、従来工法比で約2週間にもなるそうです。
本当だとしたら、かなりすごいことではないでしょうか?
2×4や2×6工法の壁パネル工法を採用されているハウスメーカーで建てられた方が見ると特段驚きもないのかもしれませんが・・・
工期短縮によるコストダウンにこだわるローコストハウスメーカーが採用するのも納得感があります。
コストダウンだけでなく、
- 雨仕舞が早い
- ゴミが出ない
- 職人不足を補う
などの効果に加え、施工精度が高いことで引き渡し後のクロス割れが激減するなんて効果もあるようです。
詳しくは、こちらを御覧くださいませ。
断熱材は外張り断熱にも使われるあれだ
このコーチパネルに採用されている断熱材は、100年ホームではネオマフォームとなっていますが、コーチパネルの公式ページを見るとフェノバボードになっています。断熱材はいくつか選択肢があるのかもしれません。ネオマフォームとフェノバボードは、ほぼ同等性能品と説明されていることが多いので、性能には大きな違いはなさそうですが、メーカーが違うので価格によって使い分けてるんでしょうか。
ネオマフォームといえば、我が家の場合外張り断熱の会社が採用していた高嶺の花の高級品というイメージです。
発泡系断熱材の中でも最高ランクの断熱性能となることから、薄くても十分な断熱性があります。
※ところで、この写真では、50mmのネオマフォームですが、コーチパネルで使われる場合40mmという情報もありましたので、ご注意ください。
第一印象で、ローコスト住宅なのにネオマフォームを使うなんて贅沢な!という第一印象でしたが、施工の大幅短縮化や手間の削減効果とのトレードオフでもメリットがあるのでしょうか。
あと、断熱に関しては、次のような点がちょっと気になりました。
- 枠があることで断熱材の範囲が狭くなるので断熱性能が落ちるのでは?
枠部分の木材の断熱性は落ちるはずなのですが、筋交いが多い場合と比較するとあまり変わりないのかも? - 厚みに余裕があるのでミラフォームなど少し性能が落ちて安い断熱材ではだめなのか?
配線スペースの確保の都合などがあるのかな? - 柱とパネル間の隙間での気密性能は問題ないのか?
工場生産で枠内の隙間がないのは理解できますが、現場ではめ込む際の柱との間に全く隙間がないというわけにはいかないでしょう。気密性を確保する場合には外側から気密テープとか貼るんですかね?
特に、性能面で優れているのは数値上よくわかるのですが、やはり物理的に断熱材が薄いのは、個人的に心もとない気がするので、内側にさらにアクアフォームを吹いてもらいたくなります。これではコスト削減の意味がないですけどね(笑)
勝手な妄想ですが、アクアフォームのような吹付け断熱材やセルロースファイバーをあらかじめ吹き付けたパネルも作成できるような気がしますが、あまり意味ないですかねぇ。
W筋交いだって負けてないけど全体的に強くなるのはすごいかも
このコーチパネル一枚で、壁倍率4.8が取れるようです。
この比較写真を見る限り、片筋交いと比較しているのが適切なのかなぁと感じたのが第一印象です。
前述の我が家の写真のように、たすきがけ筋交いと構造用合板併用の場合、壁倍率5倍が取れるようです。
ただし、コーチパネルの場合、パネルを入れたところがすべて壁倍率4.8になると考えるとすごいですね。
我が家もさすがに、すべての壁がW筋交いなわけではありませんので。
アコルデの岡本社長曰く、耐力壁の入れ方にもバランスが必要で、すべての壁にW筋交いを入れれば良いわけではないとおっしゃっていたのですが、このコーチパネルの場合は気にしなくていいんですかね。
なんだか、従来の家造りの常識から考えると大工さんの出番がますます少なくなって少々寂しい気もしますが、個人的には今後の広がりを注目していきたい施工方法だと思いました。
2020年に義務化される「改正省エネ基準」をコストをかけずに実現しようとすると、このように従来のやりかたを抜本的に変える施工方法がますます広がっていくような気がします。
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