ローコスト住宅は「手に入れやすい価格の住宅」の最適解となりえないのか?

    ローコストハウスメーカー

    久しぶりにローコスト住宅のことを考える記事を書いてみようと思います。

    年収倍率がとうとう10倍超え

    昨年10月に2023年新築マンションの「年収倍率」が全国平均で初の10倍超えになったとのニュースが出ていました。2019年度のフラット35利用者調査のデータでは、年収倍率の全国平均は「土地付き注文住宅で7.3倍」「マンションで7.1倍」「建売住宅で6.7倍」だったそうなので、恐ろしい上がり方です。

    正直、仮にローンが下りても年収の10倍の借り入れは怖くてとてもイメージできません。

    建売の購入のために、年収400万円のときに3300万円の融資を受けたときでも8.25倍でした。
    購入時は、夫婦合算で年収750万円だったのですが、すぐに妻が仕事をやめたので、かなり大変だったことを思い出します。

    引用: 東洋経済 バブル回避へ日本の住宅政策が採用すべき視点 「年収倍率」はついに10倍を突破

    明らかに、ますます持ち家に手が届かなくなってきていることが顕著だと思うのですが、手が届く価格の住宅の供給を指す、アフォーダブル・ハウジングといわれる考え方や取り組みが、日本に限らず注目を浴びているそうです。

    つい最近、オランダ住宅市場で高騰化が進んでいた売り手有利の状況から、低価格化が進んでいるなんてニュースもありました。

    日本でも、東京都が「アフォーダブル住宅」の普及を支援するためのファンド創設や空き家活用の仕組みを進めると言い始めましたね。ただし、ここでは持ち家に限らない賃貸も含めた住居の確保の方法を課題とされています。

    住宅支援ファンドを創設 中間層向け、200億円規模―東京都:時事ドットコム
    東京都の小池百合子知事は14日、中間層が手頃な価格で確保できる「アフォーダブル住宅」の普及を支援するため、ファンドを創設すると表明した。都と民間で100億円ずつ出資し、計200億円規模での組成を目指す。都内の住宅価格が高騰する中、小池氏は「...
    東京都、子育て世帯が住む“低価格”住宅提供の方針 空き家活用などで創出する計画|日テレNEWS NNN
    東京都内で住宅価格や家賃が高騰する中、小池都知事は、子育て世帯が手頃な価格で住める家を提供する仕組みをつくる方針を明らかにしました。

    さすが、カタカナに強い小池都知事です。

    一方で…

    ますます形見の狭いローコスト住宅

    以前、ローコスト住宅をディスりすぎという記事を書いたのですが、未だにちらほらローコスト住宅を批判するようなプロの意見を目にします。

    ざっと、Youtubeのサムネイルをザッピングしてみても、次のようなコピーがありました。

    • ローコスト住宅の落とし穴
    • プロが大暴露!!! 絶対建ててはいけないローコスト住宅
    • プロが暴露 一生後悔する!? ローコスト住宅の闇
    • ローコスト住宅でお金も生命も無駄遣い?!
    • ローコスト住宅あるある電気代とか光熱費高くなりがち
    • なぜ安い? プロなら選ばないローコスト住宅
    • ローコスト住宅貧乏ダサい
    • 警告2500万円以下の家は買うな

    こんなのを見ると、ローコスト住宅を選ぶのは心配になりますよね。
    我が家を建てた頃は、もっとローコスト住宅の施主さんのブログやSNS投稿も活発だったと思うのですが、今では高性能住宅派の家アカの方からのツッコミも怖いので、おちおち前に出にくい時代なんだと思います。

    特に、個人的には、最後の価格を決め打ちで線引するのは疑問があります。
    まず、以前も書いた、「30万円以下の自転車は自転車じゃない」という人との目線の噛み合わなさを感じます。

    さらに、2500万円以下では、まともな性能の家が立つはずじゃないという現場の実態を熟知している立場からの意見は、ある意味一つの目安にはなると思います。しかし、現在の一般論としての住宅の構造を是とする前提で、思考停止と言えると感じてしまいました。

    基本的には、このような発信をしている方々は、ローコスト住宅しか手に届かないご家庭は顧客ではないでしょうから嘆いても仕方がありませんが。

    ちなみに、ローコスト住宅の当事者であるパワービルダーが、次のような記事を自ら発信しているのも興味深いです。

    ローコスト住宅がやばいと思われるのはなぜ?後悔しない選び方も解説 | 注文住宅・家を建てるなら一建設株式会社
    ローコスト住宅がやばいと思われるのはなぜでしょう。本記事ではやばいと思われる理由、ローコスト住宅が安い理由を解説します。ローコスト住宅のメリット・デメリットと、ローコスト住宅で後悔しないための選び方をご紹介しますので、低価格で快適な住まいを...

    デメリット部分や不安を煽るネガティブイメージが強調されすぎて、苦労されているのかなと感じます。
    実態して問題がある部分も事実だと思いますが、個人的には量産と品質担保のコントロールが出来るような仕組み化が出来るとローコスト住宅は、アフォーダブル住宅(=手に入れやすい価格の住宅)となりうる可能性が最も近い立場にいると感じています。

    また、ローコスト住宅を実際に住んだかたからは言われているほど問題はとくにないという意見が大半という調査結果も出ています。

    引用: 新建ハウジング ローコスト住宅、「何かしらの問題あり」が半数以上も「後悔」は少数

    ここに上げられている問題も、ローコスト住宅に限った話しではない項目も多いですね。

    満足度についても、イメージされるほど後悔している人の割合は高くありません。

    引用: 新建ハウジング ローコスト住宅、「何かしらの問題あり」が半数以上も「後悔」は少数

    大抵、ローコスト住宅を建てるのは、建築のプロの方が多いのですが、実際に住んでいる方(=住む側のプロ)の意見に耳を傾けることも大切ですね。

    住宅価格の常識が変わる兆しかも?

    こんなことを考えながら、今年のローコスト住宅界隈はどうなるのかなと思っていたら、次のようなニュースが昨年12月頭に出ていました。

    住宅の構造を見直し、「住宅価格高騰」という社会課題解決をはかる「Logical and Simple System」提供開始
    株式会社ナックのプレスリリース(2024年12月3日 14時30分)住宅の構造を見直し、「住宅価格高騰」という社会課題解決をはかる「Logical and Simple System」提供開始

    株式会社ナックという会社が、「住宅価格高騰」を社会問題と捉えて、住宅構造を見直してコストダウンの仕組みづくりをするそうです。

    このナックという会社は、タマホームやアキュラホームなどのローコスト住宅の普及に大きく関わっている会社といわれています。アキュラホームは、最近ではローコストのイメージはないと思いますが、元々は低価格でもよい住宅が出来るという考え方で、住宅革命を起こした会社です。

    ヤマダ電機に買収されたレオハウスも元々、ナック傘下でした。

    もしかしたら、ローコスト住宅を批判しているプロの方々にとっては、これまでの常識を壊しに来る忌み嫌われる存在なのかもしれません。

    昨年紹介した、アキュラホームのローコスト住宅AQ HAUSは、住宅革命と言えるほどの実感はなかったのですが、このナックのようなアプローチは、現在の住宅価格の常識が変わってきている兆しと言えるのではないでしょうか。

    どうしても、過去のトラブルの多い「ローコスト住宅」という先入観が強調されている気がするので、新たな「手が届くけど十分満足できる家づくり」の選択肢が増えてくることを楽しみにしたいと思います。

    コメント

    タイトルとURLをコピーしました