私達はいつも誰かにコントロールされている!?

    コストダウン

    ローコスト注文住宅に限らずだと思いますが、家づくりは予算の上限という縛りの中で、いかに合理的に満足度の高い要望を叶えられるかが、一つのポイントです。ローコスト住宅を目指す場合、その予算の縛りが厳しいというのが特徴ですが、人間なので必ずしもいつも合理的な選択ができるわけではないですよね。

    実は、それは自分の心の弱さや偶然だけではなく、誰かにコントロールされているのかもと考えると、少し冷静になれるのではというお話です。

    皆さん、そっと後押しするという意味のナッジ(nudge)という言葉をご存知でしょうか?
    日本政府にも注目されている、人々の自発的な行動変容を促す行動経済学に基づく理論です。
    「選択肢を制限することなしに他人の行動の修正を促す手法」

    住宅に関係するトピックとして、低炭素型のライフスタイルへの行動変容を促進するナッジの実証実験が政府で進んでいるそうです。

    この「ナッジ理論」は、行動経済学の専門家である米シカゴ大学のリチャード・セイラー教授が提唱し、ノーベル経済学賞を取ったことで大変話題になりました。

    セイラー教授が紹介されているナッジ理論を活用した事例には次のようなものがあるそうです。

    • アムステルダムの男子トイレの小便器の内側にハエの絵を描いたところ清掃費が8割減少した。「標的に命中させたい」という利用者の心理を喚起することで、利用者は意図せず小便器を丁寧に使うようになった効果。この事例は有名で、日本のトイレでも見かけるようになったので、ご存知の方も多いでしょう。

      ナッジで人の心理に働きかける(1)2017年ノーベル経済学賞受賞のリチャード・セイラー教授の行動経済学 | 経営コンサルタントによる経営戦略と経営管理に効く経営管理会計

      ■ なにはともあれ、便器にハエ これが「ナッジ」 2017年10月にノーベル経済学賞受賞者:米シカゴ大学リチャード・セイラー教授を取り上げた記事もようやく落ち着きを取り戻したので、ここで記事まとめといきたいと思います。なにはともあれ、私も直接目にしたのはかれこれ13年前のオランダ、スキポール空港の男子トイレなのですが、この写真をご覧ください。

    • 「お住まいの地域では、ほとんどの人が期限内に納税していますよ」という内容の手紙を、英国政府が税金滞納者に対して送ったところ、納税率が68%から83%に改善した。これは、滞納者が強い社会的圧力を感じた結果だとのこと。この話しを聞くと沈没船ジョークの日本人のケースを思い出してしまいます。

    その他、例えば日本では、こんな事例があります。駅の階段に貼られた消費カロリーを示す案内札ですが、これは駅利用者の健康を考えた目的ではないのだとか。エスカレーター混雑緩和のために、利用客に日頃の運動不足を思い出してもらい、階段を使ってもらうよう仕向けた「ナッジ」なのです。
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    他には、漫画の背表紙のイラストがつながっていることがあるのをご存知でしょうか?一巻でも抜けると、イラストがつながらなくなってしまうのですが、これも一種の「ナッジ」のようです。人間は不完全なものを見ると完全にしたくなる行動心理があるようで、つい不完全なところを埋めるために買ってしまうのだと。

    [ところで、もしナッジの話しと事例を見て、”なぜ、このタイミングでこの事例”と思った方は、同じ業界でお仕事してるかも。でも、いないだろうなぁ・・・(汗)]

    この「ナッジ理論」で重要なポイントは、「あくまで消費者には選択の余地を残した上で、自発的に選択したという感覚を与えること」だそうです。

    あくまで、最終的に自発的な選択として本人が納得して行動した感覚を持てるわけですが、これは注意しておかないと意図があるかないかにかかわらず、目の前の状況や情報に知らず知らずにコントロールされてしまっている怖さがあるなと感じました。ちなみに、このナッジは、実は特段新しい手法ではなく、優秀なセールスマンや企業が伝統的なテクニックとして従来から使われているものを体系的に説明しているだけとも言えるそうです。

    安かろう悪かろうにならないローコスト住宅を目指す上では、なんとなく流されてのコストアップは大敵なわけですが、家づくりでのあるあると紐つけて、これはナッジなのかもという事例を考えてみたいと思います。

    ただし、この内容は見る方によっては、ご気分を害する点もあるかもしれません。
    その場合は、予めお詫び申し上げます。
    あくまで、一つの物事の捉え方として、ご理解いただけますとありがたいです。

    とってほしい選択肢が初期設定になっている

    ナッジの基本テクニックに”デフォルト(初期設定)”があります。
    例えば、無料体験でAmazonのプライム会員に加入させておいて、有料会員に誘導する手法です。この場合、”無料期間をすぎると有料会員で継続”が、デフォルトの加入時条件として初期設定されている点がナッジです。面倒なので、なんとなく続けてしまうという心理を突いているのではないかと思います。

    家づくりの場合で言うと、

    • 最初の見積もりに採用してほしい仕様が山盛り入っている→折角なので/いらないというのが恥ずかしい
    • さり気なく、ちょっと良い仕様で提案されている→ケチと思われたくない/このぐらいならいいか
    • 30年間無料点検→お得に感じるが、修理費用を無料とは言ってない

    などでしょうか?

    他には

    • 当社の●●●●暖房は、ほぼ90%の方が採用されています。
    • ●●●●断熱は、みなさん採用されます。
    • まず、●●%の方は太陽光を設置されてます。

    とかも、デフォルトのような気もしますね。

    我が家の場合、あえて標準仕様(デフォルト)から断熱仕様や一部の仕様を落とすことでコストダウンすることが出来ました。(これは、アコルデの標準仕様の設定を批判する意図では、当然ございません)
    アコルデ仕様値引き前後

    開ける道 [最終プラン室内窓修正版] – 神奈川の工務店(茅ヶ崎、平塚、他)

    前回のアルデンテ訪問の続きです。正直、言っては見たものの、いくら仕様を見直しても50万円の差を縮めるのは難しいだろうと思っていました。アチチホームの仕様と見比べて、まず社長が手を付けたのは・・・・断熱材社長「セルロースをアクアフォームにしちゃいましょう。これだけで●●万円は落とせます」えっ?いいの?マジで?実は、何度か社長にはセルロースをグラスウールにするなどして、減額できないか聞いてみた事があります…

    一般的には、標準仕様に足し算での変更をしても、引き算での変更はためらわれると思うのですが、デフォルトの強制力の強さに打ち勝てるとコストダウンができる可能性があるということかなと思います。

    デフォルトとして理解すべきか難しいですが、こんな事例もありました。
    システムバスのパネルの色で、明らかに誰もが選びたくなるひときわ目立つ質感の選択肢が、実はオプション価格が必要なものでした。

    実はオプションだった?システムバスのパネル色 – 建築プラン

    ヾ(〃^∇^)ノわぁい♪. ヽ(^◇^*)/ ワーイ.とうとう、アコルデブログが更新されましたョ♪階段の幅を1m以上にするなんてカスタマイズもできるんですねぇ。ルーバー式雨戸!島忠で一度見た事があってスゲーと思いました。あえて採用された気持ち、わかります。清水畑さん、お忙しい中の更新大変だと思いますが、OBとして、今後も更新楽しみにしております♪が、プレッシャーと思わないでくださいね(^^;さて、その清水畑さんとの打ち合わせの…

    もちろん、ショールームでも展示されていたものが、このオプションのパネルになっており、いかにも標準仕様のように感じてしまいます。このパネルの魅力も含めて、システムバスを選択するわけですが、いざ決めようとすると、そのパネルの選択には、追加費用がかかると言われるわけです。
    これがまた絶妙な価格(1.5万円)ぐらいなのですが、標準と思った仕様を後からランクを落とすというのは結構勇気がいるわけで、まぁいいかとなりそうですよね。我が家の場合は、ぐっとこらえて、追加費用がかからないものにしましたが。

    これは、ハウスメーカーのモデルハウスが、オプションもりもりで標準仕様に誤解を招かせている点にも似ていると思います。

    誰もが損はしたくない

    人間は、「こうするとお得ですよ」と言われるより「こうしないと損しますよ」と言われたほうが、行動につながるそうです。これを行動経済学上では「損失回避性」と呼ぶそうです。

    家づくりの場合では

    • 消費税引き上げ前の最後のチャンス
    • 今契約しないと太陽光売電価格が来月には下がります
    • こんなお得なサービスができるのは今だけのキャンペーンです
    • 今契約してもらえないと、この値引きはできません

    などが、損失回避性を突かれる事例ですかね。

    厳密には、現在持っているものを失う損失ではないものばかりですが、得られる利益を逃すリスク(=損失)という捉え方だと思います。

    ひたすら完璧を求めたくなる

    私自身思いっきり心当たりがあります。家づくりの当初は、まったく自分自身が家づくりに関する要望がなく、希望を書き出してみてと言われてとても困りました。しかし、不思議なもので、色々なハウスメーカーや工務店を回るうちに、もっとこうしたい、もっとここは良い仕様にと、どんどん希望がエスカレートしてきたんですよね。予算がないというのにもかかわらず、本当に困ったもんです。

    我が家の場合、そもそも予算レベルがかなり低かったので、最終的にはブレーキがかかりましたが、高度な高気密高断熱の住まいを求める心理にも作用があるのではと思いました。

    例えば、ハウスメーカーごとのQ値・UA値・C値などを比較する情報などもありますが、こんな比較で見せられるとちょっとでも完璧な家を選びたくなりますよね。トップレベルの性能を出しているところが、人気があるのもうなずける気がします。

    高断熱・高気密に対応するハウスメーカー等のQ値、UA値、C値の一覧

    関東地方で高断熱・高気密に対応するハウスメーカー等の最新のQ値とC値を紹介しています。

    しかし、この数値、相対的には判断できるのですが、住まい主自体が求める住心地としての体感と紐付けるのが難しいのではないでしょうか?
    だからこそ、少しでも最高の性能のものをとなってしまうのだと思いますが・・・

    理想を追い求め過ぎてしまうことが、予算を掛けすぎてしまうことにつながるという記事もありました。

    理想の注文住宅を建ててはいけない3つの理由。完璧な家なんて存在しない!? | イエスタ

    こんにちは。丸本です。これから家を建てようと色々情報収集をしているのであれば、おそらく何度か「理想のマイホーム」とか「理想の注文住宅」なんて言葉をお聞きだと思います。でも、実は理想の家は建ててはいけないってご存知でしたか?実は、理想を追えば追うほど満足度の低い家が建ってしまうんです…。

    判断を誘導するアンカリング

    アンカリングとは、「アンカーと呼ばれる先に与える情報が判断を歪めアンカーに近づく心理学の現象」と言われています。

    我が家も、とても断熱材選びに影響を受けたこととして、グラスウールが壁内で黒ずんでいる写真をとあるハウスメーカーで見せられた経験がありました。確かにグラスウールは、施工の不確実性など非常に色々課題を抱える悩ましい選択肢であることは事実なのですが、よくよく調べると、壁内で黒ずんだり沈み込んだりしている画像は、きちんと状況を理解しないと偏った理解に誘導させてしまっている可能性を感じます。なかなか、グラスウールを肯定する情報は見つけられませんが、下記の記事では黒カビと思っていたものがホコリだと説明されています。これは、建築士でも誤解してしまっている可能性があるようなのです。

    勇和建設の社長が明かす、住まいづくりのウソ・ホント:「グラス-ルに結露・カビ」のコメント、大いに疑問 – livedoor Blog(ブログ)

    これらの画像での中で、比較的多くが、室内側から撮影したグラスウールの黒ずんだ写真です
    そして、その解説コメントの多くが「グラスウールに(結露により)黒いカビが発生」のような内容が記載されています 多くのユーザーは、「建築士」のコメントなので、すっかり信用するモノと思いますが「グラスウールの室内側に結露が起きて、カビが発生する」という解説の物理学的矛盾に、「建築士」本人が気づいていない(?)・・・からユーザーが気づくはずもない

    ホコリだとしても、黒くなっている問題に変わりがないでしょうという向きもあると思いますが、結露するという印象を強くするアンカリングになる可能性が高い事例かなと思いました。


    その他では、ホワイトウッドの雨ざらし実験などもそうですよね。
    ホワイトウッドに対する問題点は、専門家の指摘のとおりだと思うのですが、有名な雨ざらしでの比較実験自体は、アンカリング効果を最大に利用したものではないかと思います。
    その点で、極端すぎる比較内容であまり参考にならない実験という、下記のブログの方の意見にはとても共感してしまいました。

    木材に悩む | ローコストメーカーで建てる注文住宅

    注文住宅を建てるにあたり工法や断熱でハウスメーカーを選ぶ人は多いと思いますそしてハウスメーカーが決まってからは住宅設備を選んでいく作業が始まると思うのですがそ…

    この論争は、昔からあるようで、下記のような記事もあったようです。
    ホワイトウッド
    この中で、
    「ヒノキやスギの耐朽性が大あるいは中なのに対し、ホワイトウッドは極小にランクづけされている。だからといって、柱材に適さないと考えるのは誤りだ。」
    「耐朽性区分は土に埋めるという極めて厳しい環境での試験結果で決めている。水にぬれる状況が何年も続けばヒノキやスギよりホワイトウッドは腐りやすくなるが、ぬれさえしなければ差は出ない。適切な使い方をしていれば、柱材として問題ない」
    などのコメントがありました。当時から、大論争になっているぐらいですから、ホワイトウッドを肯定する論調こそが、ローコスト住宅における柱材としての選択の正当性を誘導する危険性があると感じる人もいらっしゃるかもしれませんね。

    ただ、個人的には、あまり極端すぎる状況での調査結果や画像を見せられると、逆に現実を受け入れづらくなるほうなので、バイアスを感じないフェアな情報がもっと増えるといいなぁと思います。

    まぁ、これは自分が単にあまのじゃくなだけかもしれませんけどね(笑)

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